全国津々浦々に友人が
年賀状は毎年600枚を下らない
 会社勤めをしているときには、同僚や上役、世話になっている人々に、毎年賀状は欠かさなかった人が、ひとたび会社を辞めると、そういった人たちにさえ年賀状を出さなくなってしまう。会社を辞めたらそれ以上に手紙を書き賀状を欠かせるな――と声高にいう人がいる。当然である。

 一人の男が一旦会社を辞めると、地域社会には溶け込めない、付合いは少なくなる、友人には縁遠くなる、そして濡れ落ち葉と化して行くというのが一般的な傾向なのだ。
  「そうですね。私の航海は海岸線を途切れ途切れにつないで行く航海ですから、思わぬ人たちと巡り合い、小さな港の片隅で焚き火を囲みながら、酒を飲み交わしたり、その土地の魚を食べたりといった航海の連続だったんですよ。ずいぶん多くの人たちと友達になりました。もちろん、カヌー仲間が多いのは否めませんが、中には、寄港した港で偶然お会いした人も随分います。
 例えば、青森の下北半島の小さな港で偶然出くわした先生のグループがいるんですが、ちょうど研修か何かできていたんでしょうね。私の航海にいたく興味を持ちましてね。焚き火を囲みながら一晩語り明かしました。それ以来、何年も文通はしています。また、港で漁師さんたちとも親しくなり、酒を飲んだりし、魚をご馳走になったり、それにその地方の海の様子を案内してもらったり、この五大島完漕ではそれこそ数え切れないほどの人たちのお世話になっているんです。ですから、毎年600枚以上の賀状は欠かせません。

 五大島完漕という記録もそうした人たちの応援のお陰です。もちろん記録は記録ですが、23年間日本中の海を走り回る中で、私にとっての最大の宝は何といっても多くの友人を得たことでしょうね。そして、その友人たちと今でも付合っていられるということでしょうか。」






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