実に穏やか、ニコニコと笑顔を絶やさない銀髪の紳士である。といっても、牛眼の長州
っぽ。酒井さんの背には、一本の柔軟でこそあれ太い鋼が通っているようにお見かけする。
酒井さんは今年66歳。大手総合食品メーカーに勤め、5年前に韓国との合弁企業の副
社長を最後に、アクティブ・シニアとして新しい一歩を踏み出した。
――これは現役の頃から考えていたことなのですが、すべての仕事からはなれたとき、積
極的な高年の生活を送ろうと計画しておりました。
悠悠自適、これはどうも隠居じみていて好きではないんです。言うなれば、積極的な晴
耕雨読の生活といったほうが近いでしょうかね。
そのためには、“後門の狼”、つまりある程度の経済的裏付けを確保しておかなければな
りません。公的年金では不充分と思い、退職金はすべて会社の年金制度に預託し、60歳か
ら毎月支給してもらえるようにしておきました。
では、前門の虎、つまり僕が望む積極的な晴耕雨読の生活をどう築くかですが、スポー
ツやレジャーで外へ出ればいいということではなく、もっと社会参加型の生活をし、緊張
感を持続して生きたい。これが願いでした。――
酒井さんはこうした生き方を実現する方法として、二つの道を選択したという。それが
ボランティア活動とインターネット・トレーディングである。