過疎医療に携わるかたわら
岩魚の放流で村起こしに取り組む


今回のエルダータウン・インタビューは30年以上に渡って過疎医療に携わるかたわら、川への 岩魚放流を続けて地域起こしに取り組む石川栄五郎さん(72歳)にご登場いただきました。

診療の合間に竿を振る
 石川先生の朝は早い。診療を開始するのは朝の7時。診療所に来る患者の大部分は60、70のお年寄りである。もちろん専門が小児科医だから、小学校、中学校の校医も勤めている。

――そうだねー、今日はあそこの爺っちゃんと、あっちのばっちゃん、それに何人かが来たからもう急患でもない限り、開店休業ということになるでしょう。そこで川に出かけるわけですよ。どうしても、週に2〜3度は竿を振ることになりますね。
 この間、いつものように堰堤の上で釣っていましてね、足を滑らせてしまって、深くえぐれた落ち込みにボッチャンしてしまいました。やー、危なかった。川をよく知らない人だったら危なかったね。おかげで奥川の泡をたくさん飲んだだけで助かりましたが、さすがにその日は好きなビールの泡も口に入りませんでしたわ。(笑い)
 ともかく釣りは楽しい。それに、東京や横浜といった遠隔地から来る釣り好きの人たちと話すのもまた楽しい。せっかく、こんな奥地まで釣りにきてくれるんですから、その方たちにも十分楽しんでもらいたいんですよ。――

川の環境を整えて地域起こしに
 こうした釣り好きの思いが高じて、石川先生は個人的に岩魚や山女の放流を行っている。

――昔はどこに行っても面白いように大きな岩魚が釣れたものですが、最近は釣り人が多くなりましたし、魚も少なくなりました。さらに河川の治水工事も盛んで、川も岩魚や山女が産卵できる状態にはなっていません。この奥川にも漁業組合はあるし、組合は町からの補助を受けて年に何度かの放流をしているんですが、ともかく予算は少なすぎるし、また、放流する川を巡って組合員の対立もある。
 こんな状態では、せっかく遠くからきてくれる釣りのお客さんが十分楽しめる状態ではないんですよ。せっかくきてもらっても、釣れないとなれば釣り人の足は遠のきます。たくさんの釣り人が訪れれば、民宿やガソリンスタンドにお金が落ちます。当然、山菜や地酒など、何らかの消費で地域全体が間接的だけれども潤います。
 ご存知のように、この地域も過疎化の波をもろにうけています。若い人たちの目は都会にばかり向いているし、オヤカッチャマ(親方様)たちは自分のことしか考えない。誰もこの奥川という自然の環境を整え、釣り人や自然を楽しもうという人々を受け入れようという努力をしない。これでは過疎化はますます加速するばかりなんですね。
 十年ほど前には若い連中が牧場を核に地域起こしを考えて頑張ったこともあるんですが、やはり、年寄りたちの理解を得られずに挫折してしまいましてね。
 まあ、漁業組合にも期待できない、若い連中にも任せられないとなれば、自分でやってみるしかない。こんなわけで、細々ながら、民宿の親父さんと協力して、岩魚の放流をはじめたというわけです。







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